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第117話 前世の悪友と元カレ登場

last update Last Updated: 2025-08-12 18:49:44

「里美……それに……」

立っていたのは小学生の頃からの友人だった里見だ。そして彼女の隣には気まずそうな様子で立っている元彼の圭介。

「あら~凄い偶然ね。たまたま店の前を通りかかったら美咲の姿が目に留まったから声をかけようと思って来たのよ。ね、圭介?」

「……あ、ああ。そうなんだ……」

圭介は私と視線を合わせようとしない。それはそうだろう。私と5年も付き合った挙句に、彼はよりにもよって私にとって因縁の悪友ともいえる里美と深い関係になった挙句、別れを告げてきたのだから。その理由は……。

「里美、いいの? ふらふら出歩いたりして、お腹の子に障らない?」

そしてチラリと圭介を見た。

そう、私と圭介が別れた理由は里美が圭介の子供を妊娠したからだった。

私は今までずっと恋人を里美に盗られてきた。始めは何度も里美を怒ったし、恋人のことも詰って来たけれども、里美は懲りることは無かった。私に好きな人が出来る度、人の恋人を奪っておきながら、あっさり捨てて今度は新しくできた私の恋人を奪ってきた。だからもうそう言うものだと諦めていた。

けれど……圭介だけは違うと思っていた。5年も付き合っていたのに結局振られてしまった。その理由が里美の妊娠だと言うのだから洒落にならない。

「あら? 子供の心配してくれるの? ありがとう。さすがは美咲ね。だけどこんなところで1人で珈琲なんて飲んでいたの?」

勝ち誇った言い方がどことなく嫌だった。

「いいえ、さっきまで男の人と一緒だったの。彼は先に帰ってしまったけどね」

「え? そうなの? ひょっとして新しい恋人!?」

いつもの様に目の色が変わる里美。

「お、おい……里美……もう行こう」

余程ばつが悪いのか、圭介は里美の腕を引く。

「いいじゃない。折角久しぶりに美咲に会えたんだから3人で珈琲でも飲みましょうよ」

「里美……妊婦にカフェインは良くないんじゃないの?」

「え!?」

何故かギクリとした態度を取る里美。

「まぁ、この店にはノンカフェインの飲み物があるかもしれないから、それを飲んだら? 私はもう帰るから」

そして席を立ち、歩きだそうとした時――

「美咲!」

突然圭介が腕を掴んできた。

「ちょっと! 何してるのよ!」

里美が非難めいた声を上げるも圭介は私の腕を離さない。

「何よ。その手を離してよ」

「……」

「ねぇ。聞こえなかったの? 里美の前で何してるの
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